“顔で笑って・・・”
寅さんの新作が今年公開になります。渥美清さんの姿をスクリーンで見ることができます。高校生の頃からずっと寅さんシリーズを見続けていた私にとって今年のビッグニュースです。
映画の中での好きな場面は一杯ありますが、一番好きなのはシリーズ第11作「寅次郎忘れな草」の中でのキャバレーのどさ回り歌手リリー(浅丘ルリ子)との網走港での出会いと会話の場面です。
出漁していく漁船を見送る家族の姿をじっと見つめながら、「自分たちの存在はあってもなくてもどうでもいい泡(あぶく)のような存在だ」というリリーに、寅さんが「上等な泡でなく、風呂の中の屁みたいなものだ」といい笑い合う場面で、他の人とはちょっと違う生き方をしている者同士の通じ合う気持ちがしみじみと伝わってきます。日常の生活、幸福、自分の存在とかいろいろなことを一瞬に感じ、考えさせられる会話で場面だったように思っています。
多くの人は今の自分や周りの環境を当たり前と感じて生きています。そのため、持っているものの深さ、厚みがわからないのです。人生を底部から理解している人にはその深さ、厚みがわかります。そしてそれを理解し、受け止めて生きている人には、輝く魅力的な表情があります。それが寅さんだと思っています。
寅さんは人生の深さ、厚みを知り、それを受け止め生きていることで魅力的な存在なのだと思っています。
全てをそのまま受け入れてくれる存在、飾らず、背伸びせず、自然に受け入れてくれる存在というのはホッとする存在です。
「耳をすませば」はそういう存在を目指しています。寛容さが乏しくなってきている社会ですが、より多くの人が集えるような活動をこれからも進めていきます。
“男というものつらいもの、顔で笑って、顔で笑って、腹で泣く、腹で泣く”
(主題歌:男はつらいよ)